日本国籍を取得(帰化)したい
外国人の方が日本国籍を取得することを「帰化」といいます。帰化の種類は「普通帰化」「特別帰化(簡易帰化)」「大帰化」の3種類になります。ここでは普通帰化と特別帰化の要件について説明していきます。
普通帰化の要件
普通帰化はもっとも多い帰化の種類です。特に優遇条件に当てはまらない方はすべてこの普通帰化での日本国籍取得となります。普通帰化にはななつ要件があります。
1.引き続き5年以上日本に住所を有すること
「引き続き」とは「長期間日本を離れずに」という意味になります。ではどのくらいの期間離日してはマイナス要因となってしまうのでしょうか。
3ヶ月以上継続して日本を離れた場合
3ヶ月以上継続して離日してしまうと大きなマイナス要因となります。これはたとえ会社の出張や両親の介護などやむにやまれぬ事情であったとしても考慮してもらえないと思っておいてください。
1年間の内合計で「200日以上」離日している場合
これも大きなマイナス要因となります。この場合は継続していなかったとしてもマイナス要因です。出張や介護などでも考慮してもらえません。上記同様海外出張が多く帰化を考えていらっしゃる方はこの旨を会社に伝えて考慮してもらうようにしておいた方がいいでしょう。
3年以上の就労経験
5年間引き続き日本に居住するだけではだめで、その間「3年以上の就労経験」が必要になります。これはアルバイトではなく社員としての経験です。ただし派遣、契約社員などでは審査が厳しくなるので正社員として3年以上就労していることが望ましいです。
2.20歳以上で自国の法律上でも成人として認められていること
日本と自国とどちらでも成人であることが求められます。日本では「20歳以上」が成人ですが、「成人」の定義は国ごとに異なります。例えば中国、フランスなどは18歳以上、韓国は日本と同じで20歳以上、シンガポールでは21歳以上、アメリカでは州ごとに異なります。
3.素行が善良であること
きちんと規則や法律を遵守して、周囲の人達に迷惑をかけず生活していけるのかを審査されます。例えば税金や年金の滞納がないか、前科がないか、反社会的勢力との関わりがないかなどです。会社経営をされている方は法人税の納税状況も審査対象になります。今現在滞納のある方は申請前に支払を済ませてしまいましょう。申請後「指摘されてから」よりも事前に納めておいた方が当然ですが、印象がいいからです。ご家族がいらっしゃる方はご家族の交友関係(反社会的勢力と交友はないかなど)も審査対象です。
4.経済的に困窮することなく生計を立てられること
安定した仕事について家族全員が困らない程度の生活ができるかを審査されます。なおこの場合「収入」が主な審査項目となり、家計が赤字になっていないこと、会社経営をされている方は自転車操業になっていないことが条件です。大体月に最低でも「18万円以上」が目安になっているようです。
5.元の国籍を離脱できること
日本の法律では二重国籍が認められていないので、帰化することで元の国籍を喪失することになります。それが可能であるか、もしくは元々無国籍であることが条件となります。
6.危険な思想、暴力的な思想を持っていないこと
例えば政府の転覆を企てていたり、暴力的手法を用いて革命を起こそうと企てている場合などです。こういった場合は帰化の許可はおりません。日本人になるというのに日本政府や日本国民に危害を加えるようなことは到底認められないからです。またそのような集団や組織と関わりがあるとそれもまた大きなマイナス要因です。ご本人だけでなく家族が関わりを持っている場合もマイナス要因となります。
7.日本語の読み書きができること
今後は日本で生活をしていくことになるので、日本語の能力も審査対象になります。といっても通訳や翻訳レベルの高レベルの語学力が求められるわけではありません。日本語能力試験のN4からN3レベルの日本語能力で十分です。日本語の試験も行われますが、そんなに難しい問題が出るわけではないのである程度読み書きができれば問題ないものと思われます。
特別帰化(簡易帰化)の要件
特別許可又は簡易許可といいますが(以下「簡易帰化」で統一)、申請自体の手順と煩雑さは変わりません。ただ少し要件が緩和されるのと審査の厳格さが緩くなる傾向があります。国籍法の第6条で簡易帰化の要件が規定されており、以下の要件を満たせば簡易帰化での申請が可能となります。
1.日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有するもの
これは両親か父母のどちらかが日本人で、日本国籍を離脱している場合などが該当します。日本は二重国籍を法律で認めていないので、他国籍を取得する際に必ず日本国籍を離脱しなければなりません。そのためその子も日本国籍を取得できないわけですが、日本国内に3年以上居住することで帰化申請が可能になります。普通帰化と比べて2年申請までの居住期間が短くなります。
2.日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
在日韓国人、朝鮮人の二世、三世の方などがこのケースに該当します。結婚、出産、就職など人生の節目で帰化を希望される在日韓国朝鮮人の方も多くいらっしゃいます。帰化をご希望の方はご自身の在留年数をご確認の上お気軽に当事務所までご相談ください。
3.引き続き10年以上日本に居所を有する者
普通帰化の場合は「5年以上日本に住所を有する」でしたが、ここでは住所ではなく「居所」となっています。このあまり聞き慣れない「居所」という言葉ですが、字的には住所とあまり変わりがないように見えますが法律用語としての「住所」と「居所」には明確な違いがあります。
住所
「住所」につきましては、皆様がご存じの通りの「今住んでいるところ」という解釈で問題ありません。
居所
この聞き慣れない「居所」という言葉ですが、法律上の意味は「一定期間そこに滞在し、生活の拠点とするが永続的に住み続ける場所ではないこと」という意味になります。つまりそこからいずれは離れることが明白な拠点ということです。例えば単身赴任先の社員寮、出張先のホテル、入院中の病院などがこれに当たります。普通帰化の申請では就労期間が「3年以上」でしたが、この場合での申請ですと、就労期間が「1年以上」に短縮されます。
4.日本人の配偶者
日本人と結婚している外国人は通常より短い在留期間で帰化申請が可能になります。ふたつのパターンがありますが、ポイントは「結婚の時点で日本にいたか、いなかったか」です。
引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するもの
結婚の時点で3年以上在留歴があれば、結婚と同時に帰化申請の権利を得ます。在留歴2年のときに結婚したとしたら結婚後1年日本に在留すれば申請の権利を取得します。
婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するもの
これは外国で日本人と結婚し、三年が経過後来日、その後1年日本に在留すれば帰化申請ができるようになります。
5.日本人の子
法律上「子」には二種類あります。実子と養子です。実子か養子かによって帰化の要件が異なります。
実子の場合
「日本人の実子で日本人の子どもなんだから日本人じゃないのか?なんで帰化する必要があるんだ?」と思われそうですが、これは元々外国人だった者が帰化して、その子どもがまだ元の国籍である場合などが該当します。あるいは父母のどちらかが日本人で外国で出生し、その生まれた国の国籍を選択した場合などです。この場合日本に定住している住所があれば在留期間に関係なく帰化申請が可能です。
養子の場合
これは以下のようなケースが該当します。
外国人の父母のもとに出生 → 両親が離婚 → 引き取り手となった親が日本人と再婚 → 親といっしょに来日 → 親の再婚相手に養子縁組
上記のようなケースです。ただしこの場合要件がふたつあります。
来日後すぐに帰化申請ができるわけではありません。最低でも1年以上の在留期間が必要とされます。
これは年齢の要件です。本国法で成年に達している場合は簡易帰化申請ができません。あくまでも「本国法」ですので、国によっては21歳が成人年齢とされているところもあります。その点を間違われないように十分ご注意ください。大切なことですのでもう一度言います。「日本の成人年齢ではなく自国の成人年齢」です。
6.元日本人
これは生まれた時点では日本人でその後外国籍に帰化した人が該当します。つまり生まれた時点で外国人 → 日本に帰化 → 別の国籍に帰化又は元の国籍に戻した人 こういった人たちは該当しないということになります。ですので「元外国籍」の方で日本国籍を離脱しようと考えている方はその点も踏まえて十分にご検討されることをお勧めします。
よくあるパターンとしてはアメリカ人と結婚しアメリカに帰化、そのままアメリカに居住、しかし離婚後やっぱり帰国したいし日本国籍に戻したいというような場合です。こういった方たちは日本に戻って来て定住のための住所を確保すれば帰化申請の権利を取得するということになります。
7.出生の時点において無国籍で三年以上日本に住所を有するもの
これはなんらかの事情により出生時どこの国の国籍も取得できなかった方が該当します。出生時点で帰化申請ができるわけではなく三年以上の在留期間が必要となります。上記の4,5,6に該当すれば要件がさらに緩和されます。